肌裏打ち・増裏打ち

肌裏打ち

肌裏打ち

染美濃紙と小麦粉澱粉糊を用いて肌裏打ちをする
新しい肌裏紙には美濃紙を用います。薄く滑らかで、強い紙です。当社では岐阜県美濃の太田弥八郎製を使用しています。

第一層目である肌裏紙の色は、本紙表面の色合いに強い影響を与えます。そのため、新しい肌裏紙の選択は新調に行います。修理前の印象を変えないために、旧肌裏紙と同色の肌裏紙を用いる場合もあります。また、より絵画の表現がよく見えるように、トーンを変えた色を選択する場合もあります。いずれも天然染料を用いて、当社の技術者が染めます。

肌裏打ちには小麦粉澱粉糊を使用します。この糊は接着力が強く、確実に肌裏紙と本紙とを接着させます。しかし、水分を与えれば再び外すことができる可逆性の糊です。

 

増裏打ち

染美栖紙と小麦粉澱粉糊を用いて肌裏打ちをする
新しい増裏紙には美栖紙を用います。胡粉が漉き込まれた、柔らかくふわりとした紙です。表具に厚みを持たせ、強度を増すために打つ裏打ちです。当社では奈良県吉野の上窪良二製を使用しています。

増裏打ち

肌裏紙と同様に第二層目である増裏紙も、その色は、本紙表面の色合いに影響を与えます。そのため、本紙にあった色合いに美栖紙を染め上げます。

増裏打ちには小麦粉澱粉糊を約7年から10年寝かせた「古糊」を使用します。この糊は接着力が弱いのですが、柔らかさがあるため、表具の巻く性質に大変合った糊です。やはり、水分を与えれば再び外すことができる可逆性の糊です。

 

用語解説

小麦粉澱粉糊

小麦澱粉に水を加えて煮ることでできる糊。新糊ともいい、表具に用いられる。接着力が強いが、水分を与えれば剥がすこともできる。

古糊

小麦粉澱粉糊(新糊)を瓶に詰め、7~10年寝かせた糊。大寒の時期に炊き上げと瓶詰めの作業を行う。通常地下や蔵、縁の下などの温湿度が比較的安定した場所に保管される。表具の増裏打や総裏打に用いる。新糊より接着力が弱いため柔軟な仕上がりになる。

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