剥落止め・表打ち

剥落止め

剥落止め

絵具剥落箇所の剥落止め
経年劣化などにより、亀裂、剥落を生じている絵具には、表面から膠水溶液を塗布して、固着安定化を図ります。絵具片が大きい場合や絵具表面の吸水力が無い場合には、剥離した小口から注射器を用いてを注入します。絵具の状態によって、数種の膠を使い分け、濃度を調整しながら作業を行ないます。また、その他の接着材料を用いることもあります。

 

修理中の剥落を予防するための処置
修理にて裏打を行なう場合には、多少なりとも水を使用します。そのため、修理中に絵具が水によって不安定になることがないよう、予防的に膠水溶液を塗布して、剥落止めを行うことがあります。

表打ち

表打ち

レーヨン紙と布海苔にて画面表面を保護する
絹本著色絵画の場合、薄い絵絹の上に岩絵具によって描かれています。経年劣化が進行し、基底となっている絵絹が脆くなると、常に裏側から裏打ちによって支えられていなければ、自立できない状態になります。また絵具層も非常に不安定な状態になってしまいます。そのため、修理においても、常に絵絹を固定した状態にしなければ修理を進めることができません。よって、肌裏紙(第一層目の裏打紙)を除去する前に、表面からレーヨン紙を布海苔で貼り付けて、表面の絵具層および絵絹を完全に固定します。そうして、肌裏紙の除去に備えます。

 

用語解説

動物(兎、鹿、牛など)の骨や皮から抽出される接着剤の一種。主成分はコラーゲンや動物性蛋白質で膠を精製したものはゼラチンとよばれる。水分を加えて加熱して溶かして使う。日本画では顔料の固着や明礬を加えて滲み止めなどに用いる。

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